● MIKAN CANDY'S HOUSE ●

「それにしても奇妙だ」
 とはいえ、私は少女の尻の上で振られている、フワッとした茶色い毛で覆われたものが気になって仕方なかった。その…尻尾のように見える。大きさは私の手の平ほどであろうか。私は思わず少女の尻尾を触ってみた。
「キャン!?」
 少女が飛び上がる。
「変な所を触るな!」
 牙を剥き出しにして、少女は私を睨みつけた。猛獣のようだ。しかし、心なしか少女の顔が紅潮しているようにも見える。
「そこは敏感なんだぞ」
「ごめんごめん」

「大丈夫か?」
 苦もなく少女は私のもとにやってきた。しかし、少女の言葉に私は首を横に振った。さすがに、この状況では長く生きていられそうにない。少女は悲しそうな顔をすると、ポトポトと涙をながしはじめた。ワンワンと大泣きに泣きまくる
「オマエ、これ食え。食えば元気になる。オレも元気になった」
 少女は泣きながら、どうぶつクッキーを差し出した。
「ありがとう」
 私は少女の心にこたえる為、体に残っている力を全て使って、クッキーを一枚つかんだ。犬型クッキーだ。どこか少女に似ている気もする。
「君そっくりだよ。私もこれを食べたら君みたいに強くなれるかな」
「もちろん、オレが保証する」
 少女は泣きながら頷いた。

 あれほどの怪我がなくなっていた。何かが起こっているらしい。体が縮んでいき、メキメキと音を立て骨格が変わっていく。それに、どうやら耳も垂れ下り始めたようだ。胸と尻もグッと盛り上がっていく。私は無意識のうちに体をおそってくる熱さと息苦しさにあえいでいた。
「うっ、はぁ、ああっ!」
 その声もどこかなまめかしい。少女が固唾を飲んで私を見守っていた。私の日に焼けた体は、滑らかな艶を放ち始めていた。犬歯が大きく鋭い牙のようになると、私の腰にはパタパタと左右に揺れる尻尾ができあがっていた。

 

  私は自分の変化に驚いた。肉球のようなものが手の平にでき、爪が鋭く伸びている。体にはフワッとした純白の美しい毛が生え、胸を触ってみるとプニプニとし て柔らかい。股間の白い繁みを探してみたが、大木は切り倒されでもしたかのように何処にも見つからなかった。まるで目の前の少女のようになってしまってい る。しかも、雌にだ。
「オマエ、オレ達の仲間だ。仲良くやっていくぞ」
 少女はパタパタと尾を振って笑っている。私はこれからの事を考えようとしたが途中でやめた。頭のなかも犬のように楽観的になっている気がする。私の腹が空腹でなった。
「まずは獲物を獲ろう」
私は野兎を見つけると、四足で駆け始めた。少女もあとからついてくる。これから楽しくなりそうだ。

 

 
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